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蜘蛛と男 3

last update Data de publicação: 2026-03-11 21:37:35

 まだ朝日が登るか登らないかの時間にムツヤの連絡石から声がした。

「ムツヤくん、ムツヤくん、起きてくれ」

 目を覚ましたのはムツヤではなく、魔力をもらうために手を握って一緒に寝ているヨーリィだった。

 ヨーリィはムツヤの頬を軽くペチペチと叩いて起こす。

「うーん? おはようヨーリィ」

「起きたかムツヤくん」

「あぁ、ギルスさん。おはようございます」

「朝早くにすまないね、探知盤に反応があったんだ。北西の方角から裏の道具持ちが近づいてきている」

 裏の道具という言葉を聞いてムツヤは一気に目が覚めた。

「わがりました、すぐに皆と行きます!」

 ムツヤは皆を起こして周り、事情を説明する。

「まったく、朝っぱらからキエーウの奴らもご苦労なことだね」

 宿屋の外に出るとアシノがぼやいた。ひんやりとした朝の空気が心地よい。

「北西って言うとあの山の辺り? 私もう山登りしたくなーい!!」

 ルーは駄々をこねるがアシノに襟首を掴まれて連れて行かれる。

 探知盤をルーが持ち後衛に。前衛はモモとユモトだ、裏の道具持ちに合うまでは2人の訓練も行う。

 襲いかかる魔物をモモは切り裂き、ユモトは氷の魔法で貫き
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  • 裏庭が裏ダンジョンでした   蜘蛛と男 4

     それからしばらくして、ノエウとナリアの前に男が1人現れた。ノエウは警戒してナリアの前に立つ。「こんにちはー。そう怪しいものじゃ無いので警戒しないで下さいよー」「だ、だ、誰だお前!!」「いえいえ、僕はあなたを助けに来ました」 薄っぺらい笑みを浮かべて男は言った。「助ける?」「えぇ、これからそちらのお嬢さんを殺しに来る悪いやつが来ます」 男がナリアに手を向けたので、ノエウはナリアの事を言っているのだと理解する。「ほ、ほ、ほんとか?」「えぇ、そこであなたにはこの武器を差し上げます」 そう言って男は棍棒をノエウに手渡す。「これさえあれば誰にも負けません、そちらのお嬢さんを守ってあげてくださいね。それでは失礼」 男は風のように去っていった。そして同時にぞろぞろと人間が出てきた。「おい、そこのお前!! アラクネから離れろ!!」 ムツヤ達はめちゃくちゃに振り回される男の棍棒に手を出せずにいた。「おい、お前はキエーウの一員なのか?」 アシノが疑問に思っていた事を口にする。裏の道具は持っているが、キエーウの仮面は被っていないし、アラクネと一緒にいる事も疑問だ。「な、何いってんだ、キエーウってなんだ?」 男がしらばっくれている様には見えなかった。 だとすると、やはりキエーウに利用されていて、なおかつ、村長が言っていたアラクネに化かされている人間の可能性が高い。「全員、男を殺さないように戦うぞ。アイツは利用されているだけかもしれない。まずはアラクネからだ!!」 全員返事をしてアラクネを集中的に狙うが、男が前に立ちはだかりアラクネを庇う。 ルーとユモトは遠距離の魔法を打ったが棍棒の一振りで突風が起きてすべて弾き飛ばされた。「何あれ!? 反則じゃない!?」 まずいなとアシノは思う。相手がどんどん強くなっていく。 魔剣ムゲンジゴクを扱いきれずに飲み込まれて消滅した男のことを思い出す。 男を殺してしまうのならば簡単だが、武器を取り上げるのはその数倍難しくなる。「作戦を変える、みんな一斉に男を狙うぞ!! ただし、殺すな、武器を取り上げるぞ!!」 アシノが言うと、最初に仕掛けたヨーリィだった。木の杭を投げて牽制をし、男は棍棒を振り回した風圧でそれを弾き飛ばす。 その風に紛れてヨーリィは男の右腕に蹴りを入れたが、体重の軽いヨーリィのそれはあ

  • 裏庭が裏ダンジョンでした   蜘蛛と男 3

     まだ朝日が登るか登らないかの時間にムツヤの連絡石から声がした。「ムツヤくん、ムツヤくん、起きてくれ」 目を覚ましたのはムツヤではなく、魔力をもらうために手を握って一緒に寝ているヨーリィだった。 ヨーリィはムツヤの頬を軽くペチペチと叩いて起こす。「うーん? おはようヨーリィ」「起きたかムツヤくん」「あぁ、ギルスさん。おはようございます」「朝早くにすまないね、探知盤に反応があったんだ。北西の方角から裏の道具持ちが近づいてきている」 裏の道具という言葉を聞いてムツヤは一気に目が覚めた。「わがりました、すぐに皆と行きます!」 ムツヤは皆を起こして周り、事情を説明する。「まったく、朝っぱらからキエーウの奴らもご苦労なことだね」 宿屋の外に出るとアシノがぼやいた。ひんやりとした朝の空気が心地よい。「北西って言うとあの山の辺り? 私もう山登りしたくなーい!!」 ルーは駄々をこねるがアシノに襟首を掴まれて連れて行かれる。 探知盤をルーが持ち後衛に。前衛はモモとユモトだ、裏の道具持ちに合うまでは2人の訓練も行う。 襲いかかる魔物をモモは切り裂き、ユモトは氷の魔法で貫き、雷で黒焦げにする。 そんな調子で戦いながら進むと探知盤で分かる裏の道具の場所付近までムツヤ達はたどり着いていた。 ムツヤは探知魔法で周辺に人の気配が無いか調べていた。するとある事に気づいてルーに告げる。「探知盤の裏の道具の場所に2人居ます」「まずいな、裏の道具持ちふたりを相手に戦うのか」 アシノは少し不安そうに言った。「まぁまぁ、大丈夫よ。こっちにはムツヤっちもいるしー」「そうだな……、悩んでいても仕方ない、ゆっくり近づくぞ」 前衛をムツヤとヨーリィに任せて一行は歩き始めた。 ムツヤなら不意打ちにも対応できるし、ヨーリィは1度ぐらい致命傷を負っても枯れ葉から再生ができるからだ。「そろそろね」 ルーがそう言ったその時だった。少し開けた場所に居たのは、クモの体を持ち、上半身が人間の。 アラクネだった。「なっ、どうしてアラクネがここに!?」 アシノは目を疑った。裏の道具持ちだけでも厄介なのにアラクネまで一緒に鉢合わせするとは思わなかった。「ど、どうしますか?」 ユモトは慌ててアシノに聞いた。アシノは急いで頭を回転させて何か策を考える。「ひとまず様子を見るぞ

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    「おぉ、流石は勇者アシノ様です!!」 村長は喜び、案内をした男はホッとした顔をする。「では、今日は宿屋に泊まった後に明日から捜索を開始します」「えぇ、よろしくお願いします」 話がまとまり、ムツヤ達は村長の家を後にした。宿屋までの道中やたら人に見られた気がするが、皆アシノが目当てだろう。「お疲れ様、勇者アシノ様」「だからそう言うのやめろ」 宿屋のベッドに座りルーは意地悪っぽくアシノに言う。 ムツヤ達は片方の部屋に集まり、話をしていた。「でもどうして依頼を受けるつもりになったのよー、確かにアラクネは珍しいから見てみたいけどさー」「あの、アラクネって何ですか?」 ムツヤが言うとヨーリィ以外全員ぽかんとした顔をしたが、知らないのも無理はないと説明を始める。「アラクネって言うのはですね、上半身が女性で下半身が蜘蛛の魔物です」 ユモトが言うとルーはムツヤに質問をする。「ムツヤっちの裏ダンジョンにはそういうモンスター居なかったの?」「えぇ、見たこと無いですね」 ルーは「ふーん」と言った後に宙を見つめていた。「あの、女性ってことは人の形をしているって事ですよね? そのアラクネって亜人さんとは違うのですか?」「あー、そこから説明しないとダメか」 やれやれとアシノは頭をかいた後にムツヤに説明をしてやる。「亜人の定義ってのは、まぁ法律で決まっていて色々あるんだが。知性があるかどうか。会話が出来るとか、理性があるかとかだな」 ムツヤはあれっと思い質問をした。「って言う事は『迷い木の怪物』のマヨイギさんって亜人じゃないんですか?」「あー……」 そう言えばコイツ等は会話の出来る魔物、迷い木の怪物を知っていたんだなとアシノは思い出す。「後は……人間と他の亜人に悪意や害をもたらさないかだな。迷い木の怪物は本来ならば好戦的で、会話も何百年と生きている奴しか出来ないんだ。お前達が出会ったのは異例だったんだな」「でも、それだったらマヨイギさんはやっぱり亜人って事になるんじゃ……」「その辺の文句は国に言ってくれ、私は知らん!」 アシノはムツヤへの説明を放り投げた。代わりにユモトが説明を始める。「アラクネは体の構造が人や亜人とかけ離れているんです。人の様に見える部分の頭に脳がありませんし、体も内臓はクモの方に集まっています。食べ物は人型の口の方から

  • 裏庭が裏ダンジョンでした   蜘蛛と男 1

     ムツヤ達はまず、スーナの街を北から時計回りに石を埋めていく予定になっている。 調度いい距離に村があるので一行はそこまで向かうことにした。 道中、日が暮れてしまったのでそこで野営をする。 ムツヤの開くと家が出てくる魔術書を使えれば良いのだが、誰に見られるとも分からないので今回も粗末なテントで我慢をした。「あーあー、こちらギルス」 ムツヤの持っていた裏ダンジョンで取れる長距離用の話せる連絡石が光り、ギルスの声がした。「はい、ムツヤです」「よし、ムツヤくん。忘れないように青い石を地面に、なるべく深く埋めておいてくれ」「わかりました!」 連絡石をモモに預けてムツヤは地面に手を置く。 しばらく待った後に離すと、地面から噴水のように土が噴いて手のひらサイズの深い穴が出来る。「何その魔法!? 私にも教えて!!」 ルーがその様子を騒いで見ていた。「後で教えまずよ」 ムツヤはそう言いながら穴に青い石を落とした。 そうとう深いらしく、石の光は見えなくなる。吹き出した土でその穴を埋めて作業は終了だ。「オッケー、バッチリ探知盤には映ってるよ」「探知盤を見ないで良いのは助かりますよね」 ユモトが言うと、うんうんとムツヤとルーが頷く。 そして、次の日の昼には目的の村まで着いた。村と言っても冒険者ギルドの支部もあるし、宿屋も道具屋もある大きな村だ。 ムツヤ達はその村の冒険者ギルドへと向かう。「アサヒの村へようこそ! お客様この村のギルドは初めてですよね?」 入り口に立っていた受付嬢がムツヤやモモを見て話し始めたが、後から入ってきたアシノを見て目を丸くした。「えっ、まさか、その赤い髪と鎧…… 『赤髪の勇者アシノ』様ですか!?」「まぁ…… そうだな」 アシノは気まずそうに返事をした。「ど、どうしましょう。ちょっと支部長に」「いや、ちょっと寄っただけだから別にそこまでは……」「そういう訳にはいきません!!」 受付嬢は奥の部屋へと走り去っていく。それを見てルーはニヤニヤと笑う。「赤髪の勇者様は人気者ねー」「うるせぇ」 アシノは少し照れながらふてくされていた。 しばらくすると、受付嬢と共に中年の男がやって来た。「いやぁ、アシノ様とお連れの皆様。どうもお久しぶりです、冒険者ギルド、アサヒの支部長を務めさせて頂いています。ブーチョです」

  • 裏庭が裏ダンジョンでした   旅立ちの前の日

     ゴラテは一瞬目を見開いた後に、ゆっくりと目を閉じた。そしてまた目を開く。「そうか……」 そう一言話した後に沈黙が流れるが、再びゴラテは話し始めた。「俺もお前ぐらいの年の頃は冒険者として旅をしていたからな、止める事は出来ねぇよ」 そう言ってゴラテはお茶をすすった。ユモトは父親に気持ちを伝える。「僕は、もっと色んなものを見てみたいんだ」「それは構わねえ、構わねぇんだが……」 少し間を置いてゴラテは話を続けた。「お前、赤髪の勇者とつるんでるんだろ。それに今日葬式があったギルスとも」 ユモトだけでなくムツヤとモモも血の気が一瞬引く。「なぁ、ユモト。お前何かヤバいことに首を突っ込んでるんじゃないのか?」 全員が沈黙したが、それは肯定を意味することになる。「俺はな、お前が死んじまうことだけが心配なんだ。お前が居なくなったら俺は……」 強い父親が腹を割って話している事にユモトは涙が出そうになった。だがユモトはちゃんと父を見て言った。「お父さん、今僕がしていることは…… ギルドの秘密でお父さんにも言えない…… でも終わったら全部話すから、今は僕を信じて欲しいんだ!!」 ユモトが言い終わるとふぅーっと息を吐いてゴラテは話す。「そうか…… お前のことだから間違っても悪い事をしていないのはわかる」「お父さん…… 勝手なことを言ってごめん」「良いんだ、だが1つだけ約束してくれ」 ゴラテの言葉をみな固唾を飲んで待つ。「絶対に生きて無事に帰ってきてくれ、それだけでいい」 ユモトは鳥肌が立ち、ギュッと目をつむった後に言った。「うん、絶対に帰ってくるよ。約束する!」「ムツヤ、モモの嬢ちゃん、ユモトをよろしく頼む」 いきなり名前を呼ばれた2人はビクッとしたが、深々と頭を下げるゴラテに返事をする。「ユモトさんは絶対に俺が守ります!」「私も同じ気持ちです」 話がまとまり、ムツヤ達は玄関に立っていた。「それじゃ、行ってきます」「おう、行って来い」 そう言って玄関を出ると、ユモトは最後までゴラテを見てドアを閉じる。 ユモトの家から少し歩いた先の時計台の下に待ち合わせをしていたヨーリィが居た。 大勢で押しかけても仕方がないだろうと、顔見知りのムツヤとモモだけ同行し、ヨーリィは買い出しをしていたのだ。「おまたせヨーリィちゃん」「私もいま来た

  • 裏庭が裏ダンジョンでした   偽装工作 2

     遺体安置所へ行くと、棺桶に入れられたギルスのデコイがあった。「ギルドでの葬儀はこれを広場まで親しい者たちで運ぶ、私達で運ぶぞ」 大きな台車に乗せられた棺桶の周りをムツヤ達が囲む、その時ふとアシノが言った。「肝心なことを言い忘れるところだった。ギルスの死因は実験の事故で、私達の仲間になったのは、私がギルドに勧誘したからという設定だ」「わがりまじだ」 ムツヤは少し緊張気味に言った、他の皆も頷いて返事をする。「それじゃ行くぞ」 薄暗い遺体安置所を抜けると眩しい日差しが出迎えてくれた。全員でガラガラと台車を押してギルドの横を通り抜け、正面まで歩く。 そこには喪服を着た者たちが集まってギルスを待っていた。チラホラと泣いている者がいる。 待っていた者たちもムツヤの後を着いて広場まで移動する。演説台の隣でトウヨウが待っていた。 その演説台の前へ棺桶を置くとアシノとルーはトウヨウに1礼する。それに習い皆もお辞儀をした。 ムツヤ達は参列者の場所へと下がり、トウヨウが演説台に上がる。「皆、お集まり頂き感謝する。きっと故人もそう思っているだろう」 そこまで言って少し間を開けてまた話し始める。「ギルスは昔から冒険者ギルドへ勧誘していた。そして数日前にやっと首を縦に振ったというのに、実験中の事故という形で、この才のある若者が死んでしまった事は非常に残念で、非常に無念である」 ルーは泣き始めていた。おそらくまた唐辛子をちぎった手で目をこすったのだろう。ユモトも雰囲気に流されて少し泣きそうになる。「ギルドの仲間となって日は浅いが、ギルスの店で世話になった者も多いことだろう。そういった意味ではギルスは昔から私達の良き仲間であったと言える」「ギルスの安らかな眠りと冥福を祈って黙祷」 参列者達は皆、手を組んで目をつむり、両手を組んで祈りを捧げた。その後は1人、また1人棺桶に花を入れながらギルスへ最後のお別れの挨拶をする。 泣きながら花を入れる人々を見ると、ギルスの人の良さと慕われていることがよく分かった。 そして、そんな人達を騙していることにムツヤ達は心が痛む。 棺桶の蓋が閉められると、男達が棺桶を担いで町の外の墓地へと歩く。1つ空いた大きな穴に棺桶を入れて皆で土を被せた。そしてまた黙祷をする。 これでギルスはこの世にいない者となった。 葬儀が終わると

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